ヨーロッパヤマネコ

ヨーロッパヤマネコ European wildcat

Felis silvestris Schreber, 1777

太い尾が目印の、ヨーロッパの森の野生ネコ

最終更新:

IUCNLC 低懸念 分類イエネコ系統 頭胴長45〜80 cm 体重3〜8 kg

概要

ヨーロッパからコーカサス地方、トルコのアナトリアにかけての森にすむ野生ネコです。家猫のトラ猫に似ていますが、がっしりした体と、太くて先の丸い尾が見分けどころです。家猫の直接の祖先ではなく、家猫の祖先はリビアヤマネコとされています。IUCN レッドリストでは低懸念(LC)ですが、スコットランドなどでは家猫との交雑によって、野生の集団の存続が危ぶまれています。

基本データ

学名Felis silvestris
命名者Schreber, 1777
分類ネコ亜科 / イエネコ系統 / Felis
階級
頭胴長45〜80 cm
体重3〜8 kg
分布ヨーロッパ・アジア
生息環境森林・山地
活動時間夜行性・薄明薄暮性
IUCN レッドリスト LC 低懸念
ワシントン条約附属書II

見た目の特徴

頭から胴までが45〜80cm、体重は3〜8kgほどで、体重は季節によって大きく変わります。灰褐色の地にはっきりした黒い縞があり、背中には黒い線が1本通ります。尾は太くふさふさしていて先が丸く、はっきりした黒い輪が数本と黒い尾先があります。頭は幅が広く、脚は多くの家猫より長めです。

生態

単独でなわばりを持って暮らします。主に夜に活動しますが、人の少ない地域では昼にも動き、明け方と夕方に活発になります。主な獲物はハタネズミなどのネズミの仲間で、ウサギのいる地域ではウサギもよく食べます。交尾は1〜3月、出産はおもに4〜5月で、妊娠期間は64〜71日ほど、1回に1〜8頭の子を産みます。

分布と生息環境

ヨーロッパ各地から、ロシアの隣接地域、コーカサス地方、トルコのアナトリアにかけて分布します。かつては北欧を除くヨーロッパに広く分布していましたが、現在の分布はとびとびになっています。2017年の分類では、ヨーロッパの F. s. silvestris と、コーカサス・アナトリアの F. s. caucasica の2亜種に分けられています。

広葉樹林や、針葉樹と広葉樹が混じった森を主なすみかとし、林の周りの草地や低木林も利用します。ピレネー山脈では標高2,250mまで記録があります。

家猫との関係

家猫によく似ていますが、家猫の直接の祖先ではありません。家猫の祖先は、アフリカや西アジアにすむリビアヤマネコと考えられています。2025年に発表された研究では、家猫がヨーロッパに入ってきたのは約2,000年前とされ、それより古い時代の標本で家猫との関係が議論されていた猫の多くは、ヨーロッパヤマネコと判定されました。一方で、家猫が各地に広がったことで、今ではヨーロッパヤマネコと家猫の交雑が大きな問題になっています。

ペットとして飼える?

ヨーロッパヤマネコ は野生動物で、ペットとして飼うべき動物ではありません。見た目が家猫に似ていても家庭での暮らしには向かず、多くの国で捕獲や取引が法律や条約で規制されています。野生の姿を知り、すみかの森や草原を守ることが、この動物のためにできることです。

保全状況

2022年に公表された IUCN レッドリストの評価では低懸念(LC)で、個体数の傾向は不明とされています。国ごとの評価はさまざまで、スコットランドでは深刻な危機(CR)とされています。IUCN ネコ専門家グループによると、スコットランドでは野外にいる猫の8割以上が交雑個体か野良猫とされ、2019年の報告書では、野生の集団が自力では存続できない状態にあると結論づけられました。現在は「Saving Wildcats」という計画で、飼育下で繁殖させた個体を2023年からケアンゴームズ国立公園に放しています。ほかに、家猫からうつる病気、交通事故、殺鼠剤、生息地の分断も脅威です。ワシントン条約では附属書IIに掲載されています。

発見と記載

1777年、ドイツの博物学者シュレーバーが Felis silvestris と名づけました(1778年とする資料もあります)。長いあいだ、アフリカやアジアのリビアヤマネコも含む広い種とされていましたが、2017年の IUCN ネコ専門家グループの分類でリビアヤマネコが独立した種となり、ヨーロッパヤマネコはヨーロッパとコーカサス・アナトリアの集団を指す種になりました。

豆知識

  • 学名の silvestris は、ラテン語で「森の」という意味です
  • ヨーロッパでは、全身が黒い個体の記録がありません
  • 名前の似ているヨーロッパオオヤマネコは、オオヤマネコ属の別の動物です

よくある質問

ヨーロッパヤマネコは家猫の祖先ですか?

いいえ。家猫の祖先は、アフリカや西アジアにすむリビアヤマネコと考えられています。ヨーロッパヤマネコは家猫と近い仲間で、交雑もできますが、家猫の直接の祖先ではありません。

ヨーロッパヤマネコの尾は太くて先が丸く、黒い輪がはっきり分かれています。背中の黒い線は尾の付け根で止まり、脇腹の縞は途切れにくいのも特徴です。ただし交雑個体もいるため、専門家は複数の毛皮の特徴や遺伝子を組み合わせて判断します。

家猫との交雑が進み、2019年の IUCN ネコ専門家グループの報告書では、野生の集団が自力では存続できない状態にあるとされました。2023年からは、飼育下で繁殖させた個体を野外に放す取り組みが続けられています。

野生動物なので、ペットとして求めるべきではありません。国際的な取引はワシントン条約で規制されており、ヨーロッパの多くの国で保護の対象になっています。

参考文献

  1. European wildcat (Felis silvestris) IUCN SSC Cat Specialist Group
  2. A revised taxonomy of the Felidae: The final report of the Cat Classification Task Force of the IUCN/SSC Cat Specialist Group Cat News Special Issue 11, 2017
  3. ワシントン条約 附属書(2025年2月7日発効) CITES, 2025
  4. Definition of a wildcat - updated guidance NatureScot
  5. Saving Wildcats Cairngorms National Park Authority
  6. The dispersal of domestic cats from North Africa to Europe around 2000 years ago Science, 2025
  7. Conservation of the wildcat (Felis silvestris) in Scotland: Review of the conservation status and assessment of conservation activities IUCN SSC Cat Specialist Group / NatureScot, 2019