アフリカから西アジア、中央アジアにかけて広く分布する小型の野生ネコです。遺伝子の研究から、世界中の家猫はこの種の亜種 F. l. lybica から生まれたと考えられています。見た目は家猫によく似ていますが、脚が長く、耳の裏が赤褐色をしています。IUCN レッドリストでは低懸念(LC)と評価されていますが、家猫との交雑が大きな問題になっています。
リビアヤマネコ African wildcat
Felis lybica Forster, 1780
世界中の家猫の祖先とされる野生ネコ
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概要
基本データ
| 学名 | Felis lybica |
|---|---|
| 命名者 | Forster, 1780 |
| 分類 | ネコ亜科 / イエネコ系統 / Felis |
| 階級 | 種 |
| 頭胴長 | 40.6〜80 cm |
| 尾長 | 21.5〜37.5 cm |
| 体重 | 2〜8 kg |
| 分布 | アフリカ・アジア・ヨーロッパ |
| 生息環境 | サバンナ・草原・砂漠 |
| 活動時間 | 夜行性 |
| IUCN レッドリスト | LC 低懸念 |
| ワシントン条約 | 附属書II |
見た目の特徴
大きさは大型の家猫くらいで、頭から胴までが40〜80cm、体重は2〜8kgほどです。毛色は砂色や黄褐色から灰色で、模様には地域差があり、アフリカの個体では縞が薄く目立たない一方、アジアの亜種では斑点が目立ちます。脚には横縞があり、耳の裏は赤褐色です。尾は細めで先がすぼまり、黒い輪が数本あって先端は黒くなります。家猫より脚が長く、座ると体がほぼまっすぐに立つ姿勢になるのも特徴とされます。
生態
単独で暮らし、主に夜に活動しますが、昼間に見られることもあります。スナネズミやトビネズミなどのネズミの仲間とノウサギの仲間を中心に、鳥、トカゲ、ヘビ、昆虫なども食べます。妊娠期間は56〜68日ほどで、1回に1〜6頭の子を産みます。
分布と生息環境
アフリカの広い範囲から、アラビア半島や中東を経て、中央アジア、インド、中国、モンゴルまで分布します。地中海のサルデーニャ島やコルシカ島などにもすんでいますが、これらの島の集団は、古い時代に人が持ち込んだものと考えられています。熱帯雨林や大きな砂漠の中心部にはいません。2017年の分類では、北・東・西アフリカと中東の F. l. lybica、アフリカ南部の F. l. cafra、南西アジアから中央アジアの F. l. ornata の3亜種に分けられています。
半砂漠、サバンナ、低木の草原、乾燥した林など、さまざまな環境にすみ、標高3,000mほどまで見られます。
家猫との関係
特定の猫種ではなく、すべての家猫の祖先にあたると考えられている野生ネコです。2007年に発表された Driscoll らの研究は、世界各地の猫約980頭の遺伝子を調べ、家猫が近東のリビアヤマネコの集団に由来することを示し、農耕の村との関わりから家畜化が始まった可能性を論じました。キプロス島では、約9,500年前の人の墓のそばに猫が埋葬されていた例が見つかっています(2004年発表)。古代 DNA の研究(2017年発表)では、近東とエジプトの両方の集団が家猫の広がりに関わったことが示されました。2025年に発表された研究は、家猫がヨーロッパに広がったのは約2,000年前で、おそらく北アフリカから持ち込まれたとしています。家猫の起源と広がり方については、今も研究が続いています。
ペットとして飼える?
リビアヤマネコ は野生動物で、ペットとして飼うべき動物ではありません。見た目が家猫に似ていても家庭での暮らしには向かず、多くの国で捕獲や取引が法律や条約で規制されています。野生の姿を知り、すみかの森や草原を守ることが、この動物のためにできることです。
保全状況
2022年に公表された IUCN レッドリストの評価では、低懸念(LC)とされています。個体数の傾向は地域によって違い、はっきりしていません。ワシントン条約では附属書IIに掲載されています。大きな脅威の一つが家猫との交雑で、純粋なリビアヤマネコの遺伝子が失われるおそれがあります。ほかに、密猟、生息地の減少、交通事故、野良猫からうつる病気も心配されています。
発見と記載
1780年、ドイツの博物学者ゲオルク・フォルスターが、チュニジアのガフサ付近の個体をもとに記載しました。長いあいだヨーロッパヤマネコ(Felis silvestris)の亜種として扱われてきましたが、2017年の IUCN ネコ専門家グループの分類で、独立した種とされました。
豆知識
- 英語では African wildcat のほか、Afro-Asiatic wildcat とも呼ばれます
- 家猫と交雑した個体は、耳の裏が暗い灰色や黒になりやすいとされます
- 小型の野生ネコの中でも、特に分布の広い種の一つです
よくある質問
遺伝子の研究(2007年の Driscoll らの研究など)から、家猫はリビアヤマネコの亜種 F. l. lybica から生まれたと考えられています。家畜化がいつ、どこで始まり、どのように広がったかについては、2025年にも新しい研究が発表されるなど、議論が続いています。
脚が長いこと、耳の裏が赤褐色であること、尾が細めで先に黒い輪と黒い先端があることなどが手がかりになります。ただし家猫との交雑個体も多く、見た目だけで確実に見分けるのは難しいとされます。
現在、国内の動物園で展示されているという公式な情報は、当サイトでは確認できていません。
野生動物なので、ペットとして求めるべきではありません。国際的な取引はワシントン条約で規制されています。
参考文献
- African wildcat (Felis lybica)
- A revised taxonomy of the Felidae: The final report of the Cat Classification Task Force of the IUCN/SSC Cat Specialist Group
- ワシントン条約 附属書(2025年2月7日発効)
- The Near Eastern Origin of Cat Domestication
- Early Taming of the Cat in Cyprus
- The palaeogenetics of cat dispersal in the ancient world
- The dispersal of domestic cats from North Africa to Europe around 2000 years ago
- African Wildcat