中央アジアの高原や山地の草原にすむ野生ネコです。長く密な毛のため実際より大きく見え、平たい顔に小さく丸い耳、丸く縮む瞳孔が特徴です。IUCN レッドリストでは2020年に低懸念(LC)に見直されましたが、個体数は減少傾向とされています。日本でも複数の動物園で飼育されています。
マヌルネコ Pallas's cat
Otocolobus manul (Pallas, 1776)
長い毛と丸い瞳をもつ、高原の野生ネコ
最終更新:
概要
基本データ
| 学名 | Otocolobus manul |
|---|---|
| 命名者 | (Pallas, 1776) |
| 分類 | ネコ亜科 / ベンガルヤマネコ系統 / Otocolobus |
| 階級 | 種 |
| 頭胴長 | 46〜65 cm |
| 尾長 | 21〜31 cm |
| 体重 | 2〜5 kg |
| 分布 | アジア |
| 生息環境 | 草原・山地 |
| 活動時間 | 薄明薄暮性 |
| IUCN レッドリスト | LC 低懸念 |
| ワシントン条約 | 附属書II |
見た目の特徴
頭から胴までが46〜65cm、体重は2〜5kgほどで、家猫と同じくらいの大きさです。脚が短くずんぐりした体つきで、毛がとても長く密なため、実際より大きく見えます。腹側の毛は背中や脇の約2倍の長さがあります。毛色は灰色から黄褐色で、毛先が白く、霜が降りたように見えます。耳は小さく丸く、頭の低い位置についています。瞳孔は縦に細くならず、小さな丸に縮みます。尾は太く、黒い輪と黒い先端があります。
生態
主に明け方と夕方に活動しますが、どの時間帯にも活動することがあります。餌の半分以上をナキウサギが占め、ほかにスナネズミやハタネズミなどのネズミの仲間も食べます。繁殖の時期は決まっていて、モンゴルでは12〜3月に交尾し、主に4〜5月に出産します。妊娠期間は66〜75日ほどで、1回に平均3〜4頭の子を産みます。野生では、子の約7割が独り立ちする前に死ぬとされます。モンゴルでの調査では、行動圏の平均はメスで約23km²、オスで約99km²と、小型のネコとしては広い範囲を動き回ります。
分布と生息環境
中央アジアを中心に、西はイランから、東はモンゴルや中国まで分布し、主な個体群はモンゴルと中国にいます。ヒマラヤにも記録があります。2017年の分類では、南西・中央アジアの O. m. manul と、ヒマラヤの O. m. nigripectus の2亜種が暫定的に示されていますが、亜種を分けない見方もあります。
山地の草原や低木の草原、岩場を好み、峡谷や岩の割れ目など身を隠せる場所を使います。標高440mから約5,600mまで記録があり、ネパールでは標高約5,600mで見つかった糞から、遺伝子の分析で生息が確認されています。深い雪が長く続く場所は苦手とされます。
家猫との関係
家猫との交配に使われた猫種は確認されていません。かつては、その見た目からペルシャ猫の祖先と考えた博物学者もいましたが、現在は支持されていません。
ペットとして飼える?
マヌルネコ は野生動物で、ペットとして飼うべき動物ではありません。見た目が家猫に似ていても家庭での暮らしには向かず、多くの国で捕獲や取引が法律や条約で規制されています。野生の姿を知り、すみかの森や草原を守ることが、この動物のためにできることです。
保全状況
IUCN レッドリストでは、2002年から準絶滅危惧(NT)とされてきましたが、2020年に公表された評価で低懸念(LC)に見直されました。この見直しは保全の成果ではなく、分布や個体数についての知見が増えたためです。この評価では、世界の成熟個体は約5万8,000頭と試算されていますが、不確実性の大きい推定です。個体数は減少傾向で、生息地は分断されているとされています。家畜の増加や耕地化による草原の劣化、鉱山開発、ナキウサギやネズミの駆除による餌の減少と毒餌による中毒、牧畜犬による捕食、狩猟、巣穴として使うマーモットの減少が主な脅威です。ワシントン条約では附属書IIに掲載されています。
発見と記載
1776年、ドイツの博物学者ペーター・ジーモン・パラスが、シベリア南部で見つけた個体をもとに Felis manul として記載しました。英名の Pallas's cat は、このパラスにちなみます。現在はマヌルネコ属(Otocolobus)の唯一の種で、遺伝子の研究から、ベンガルヤマネコに近い「ベンガルヤマネコ系統」に含まれています。
豆知識
- 瞳孔は縦長ではなく、丸く縮みます
- ネパールでは、標高約5,600mで生息が確認されています
- 「マヌル」はモンゴル語の呼び名に由来するとされます
よくある質問
上野動物園、那須どうぶつ王国、神戸どうぶつ王国、東山動植物園、野毛山動物園など、国内の複数の動物園で飼育されています(各園の公式情報に基づく)。展示の状況は変わることがあるので、訪れる前に各園の情報を確認してください。
体は家猫ほどの大きさですが、毛がとても長く密なため、実際より大きく見えます。特に腹側の毛は背中の約2倍の長さがあり、寒い高原での暮らしに役立っていると考えられています。
IUCN レッドリストでは2020年に準絶滅危惧(NT)から低懸念(LC)に見直されました。ただしこれは知見が増えたためで、個体数は減少傾向とされ、草原の劣化などの脅威は続いています。
野生動物なので、ペットとして求めるべきではありません。国際的な取引はワシントン条約で規制されています。
参考文献
- Otocolobus manul. The IUCN Red List of Threatened Species 2020
- Pallas's cat (Otocolobus manul)
- A revised taxonomy of the Felidae: The final report of the Cat Classification Task Force of the IUCN/SSC Cat Specialist Group
- ワシントン条約 附属書(2025年2月7日発効)
- Otocolobus manul (Carnivora: Felidae)
- マヌルネコ
- マヌルネコについて(レファレンス協同データベース)
- 野毛山動物園にマヌルネコが仲間入りします