長崎県の対馬だけにすむ、ベンガルヤマネコの仲間です。約10万年前、大陸と陸続きだった時代に渡ってきたと考えられています。2026年に公表された環境省の第六次調査(2020〜2024年度)では、上島の定住個体は約90頭または約100頭と推定され、下島でも個体識別で17頭が確認されました。下島での分布の広がりなどから、回復傾向と評価されています。環境省レッドリストで絶滅危惧IA類、国の天然記念物です。
ツシマヤマネコ Tsushima leopard cat
Prionailurus bengalensis euptilurus (Elliot, 1871)
対馬だけにすむ、日本のもう一つの野生ネコ
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概要
基本データ
| 学名 | Prionailurus bengalensis euptilurus |
|---|---|
| 命名者 | (Elliot, 1871) |
| 分類 | ネコ亜科 / ベンガルヤマネコ系統 / Prionailurus |
| 階級 | 亜種 (ベンガルヤマネコ) |
| 頭胴長 | 50〜60 cm |
| 体重 | 3〜5 kg |
| 分布 | 日本・アジア |
| 生息環境 | 森林・草原 |
| 活動時間 | 夜行性・薄明薄暮性 |
| IUCN レッドリスト | NE 未評価 |
| ワシントン条約 | 附属書II |
| 国内の指定 | 天然記念物(1971年)・国内希少野生動植物種(1994年)・環境省レッドリスト 絶滅危惧IA類 |
見た目の特徴
大きさは家猫ほどで、頭から胴までが50〜60cm、体重は3〜5kgほどです。全身に斑点があり、額には茶と白のはっきりした縦縞があります。尾は太く長めです。耳の裏には「虎耳状斑」と呼ばれる白い斑があり、家猫には見られない特徴です。毛色はイリオモテヤマネコより明るいとされます。
生態
夜行性で、特に明け方と夕方によく活動し、繁殖期以外は単独で暮らします。もっとも重要な餌はネズミの仲間で、1年を通して餌の6〜8割をネズミやモグラが占めます。冬は鳥、田に水が入る時期はカエルを食べる割合が増えます。冬に交尾して春に出産し、1回に産む子の数は通常1〜2頭(1〜3頭とする資料もあります)と、家猫より少なめです。子は約6か月で独り立ちします。
分布と生息環境
日本では長崎県の対馬だけに分布します。対馬は北の上島と南の下島に分かれ、多くは上島にすんでいます。下島では確実な記録が途絶えていましたが、2007年に23年ぶりに生息が確認され、第六次調査では下島での分布が大きく広がったことがわかりました。
照葉樹林や落葉広葉樹林、田畑、沢などが入り混じった場所がもっとも適した環境とされ、比較的標高の低い谷間や林の縁、山の斜面などを利用します。
家猫との関係
ツシマヤマネコが猫種づくりに使われたという記録はありません。猫種ベンガルは大陸のベンガルヤマネコと家猫の交配から作られたもので、対馬の個体群とは関係ありません。家猫との関係で心配されているのは、イエネコから病気がうつることです。
ペットとして飼える?
ツシマヤマネコ は野生動物で、ペットとして飼うべき動物ではありません。見た目が家猫に似ていても家庭での暮らしには向かず、多くの国で捕獲や取引が法律や条約で規制されています。野生の姿を知り、すみかの森や草原を守ることが、この動物のためにできることです。
保全状況
1960年代には250〜300頭いたと推定されていますが、その後大きく減り、2010年代前半の上島の推定は「70頭又は100頭」でした。2026年に公表された第六次調査では、下島での分布の広がりなどから回復傾向と評価されましたが、上島の一部の地域では減っている可能性も指摘されています。主な脅威は、落葉広葉樹林の減少、シカやイノシシによる下草の衰退などで餌のネズミが減ったこと、道路や河川改修による生息地の分断、交通事故、イエネコからの病気の感染などです。対馬野生生物保護センターの集計では、1992年以降に164件の交通事故が確認され、151頭が死亡しています(2026年9月20日閲覧)。2025年度は事故が多く、2026年1月には環境省・長崎県・対馬市が「交通事故非常事態」を宣言しました。1997年には対馬野生生物保護センターが開所し、福岡市動物園では2000年に飼育下での繁殖に初めて成功しました。現在は全国の動物園などで分散して飼育されています。IUCN レッドリストには亜種としての評価はなく、種としてのベンガルヤマネコは低懸念(LC)とされています。
この亜種が属する種
発見と記載
学名の P. b. euptilurus は、1871年にアメリカの動物学者エリオットが、ロシアのアムール川流域の個体をもとに名づけた、ベンガルヤマネコの北方の亜種です。環境省はツシマヤマネコをこの亜種としています。2017年の IUCN ネコ専門家グループの分類報告では、この亜種に、ロシア極東や中国東北部、台湾、対馬、西表島の集団が含められており、ツシマヤマネコはこの亜種に含まれる対馬の地域個体群にあたります。
豆知識
- 地元では「とらやま」と呼ばれてきました
- 耳の裏の白い斑(虎耳状斑)は、家猫には見られない特徴です
- 1971年に国の天然記念物に指定されました
よくある質問
2026年に公表された環境省の第六次調査(2020〜2024年度)では、上島の定住個体が約90頭または約100頭と推定され、下島でも個体識別で17頭が確認されました。下島での分布の広がりなどから回復傾向と評価されましたが、上島の一部では減っている可能性も指摘されています。
対馬野生生物保護センターのほか、福岡市動物園、よこはま動物園ズーラシア、井の頭自然文化園など、全国の動物園で飼育されています(2026年2月時点で11施設・36頭)。繁殖のために公開されていない個体もいるので、訪れる前に各施設の情報を確認してください。
ツシマヤマネコは道路に飛び出すことがあり、交通事故が大きな脅威になっています。特に夜間や明け方、夕方は速度を落として運転してください。事故を起こしたり、けがをした個体を見つけたりしたときは、対馬野生生物保護センターに連絡してください。
ペットとして捕獲・入手することはできません。国内希少野生動植物種として、捕獲や譲渡、販売などは種の保存法で原則禁止されています。国の天然記念物でもあります。