沖縄県の西表島だけにすむ、ベンガルヤマネコの仲間です。1965年に学術的に知られ、1967年に新種として発表されました。2005〜2007年度の環境省の調査では、島に定住する個体は100〜109頭と推定されています。環境省レッドリストで最も絶滅のおそれが高い絶滅危惧IA類で、国の特別天然記念物です。
イリオモテヤマネコ Iriomote cat
Prionailurus bengalensis iriomotensis (Imaizumi, 1967)
西表島だけにすむ、日本の野生ネコ
最終更新:
概要
基本データ
| 学名 | Prionailurus bengalensis iriomotensis |
|---|---|
| 命名者 | (Imaizumi, 1967) |
| 分類 | ネコ亜科 / ベンガルヤマネコ系統 / Prionailurus |
| 階級 | 亜種 (ベンガルヤマネコ) |
| 頭胴長 | 50〜60 cm |
| 尾長 | 23〜24 cm |
| 体重 | 3〜5 kg |
| 分布 | 日本・アジア |
| 生息環境 | 森林・湿地・山地 |
| 活動時間 | 夜行性・薄明薄暮性 |
| IUCN レッドリスト | CR 深刻な危機 |
| ワシントン条約 | 附属書II |
| 国内の指定 | 特別天然記念物(1977年)・国内希少野生動植物種(1994年)・環境省レッドリスト 絶滅危惧IA類 |
見た目の特徴
大きさは家猫ほどで、頭から胴までが50〜60cm、体重は3〜5kgほどです。オスのほうが大きく、四肢と尾は太めです。背は焦茶色、体の側面は灰褐色の地に暗褐色の斑紋が散らばり、全体に黒っぽい毛色をしています。額から後頭部にかけて白と黒の縞があり、先の丸い耳の背面には白い斑があります。
生態
基本は夜行性で、明け方と夕方に活動のピークがあります。単独で暮らし、泳ぎが上手で、木の上でも狩りをします。クマネズミなどの小型の哺乳類のほか、シロハラクイナなどの鳥、キシノウエトカゲなどの爬虫類、カエル、コオロギなどの昆虫まで、幅広い動物を食べます。発情のピークは2〜4月、出産は4〜6月と推定され、子は秋から冬に独り立ちします。
分布と生息環境
沖縄県の西表島(面積約289km²)だけに分布します。小さな島の限られた環境で生き続けてきた野生ネコです。
湿地や川、沢沿いをよく利用し、マングローブ林や農地の周り、海岸部も使います。以前は標高200m以下の低地に多いと考えられていましたが、近年の研究で、島全体に広く分布し、山地でも定住・繁殖していることがわかってきました。
家猫との関係
猫種ベンガルのもとになったのは大陸のベンガルヤマネコで、イリオモテヤマネコが交配に使われたという記録はありません。西表島のある竹富町では猫飼養条例により、飼い猫は室内飼養を原則とし、マイクロチップによる個体登録などを定めています。イエネコからの感染症を防ぐため、ワクチン接種なども進められています。
ペットとして飼える?
イリオモテヤマネコ は野生動物で、ペットとして飼うべき動物ではありません。見た目が家猫に似ていても家庭での暮らしには向かず、多くの国で捕獲や取引が法律や条約で規制されています。野生の姿を知り、すみかの森や草原を守ることが、この動物のためにできることです。
保全状況
2005〜2007年度の調査で、島に定住する個体は100〜109頭と推定されています。主要な脅威のひとつが交通事故で、1978年から2025年8月までに102件の事故が確認され、そのうち94件で死亡しています。子ネコが出歩き交通量も増える7〜8月は、特に事故の危険が高まります。道路の下をくぐる通路や侵入防止柵、運転者への注意喚起などの対策が続けられています。ほかにも、開発による生息地の変化、イエネコからの感染症や餌をめぐる競合などが心配されています。
この亜種が属する種
発見と記載
1965年、動物文学作家の戸川幸夫が西表島で頭骨と毛皮を手に入れ、動物学者の今泉吉典に相談したことが発見のきっかけです。1967年、今泉によって新しい属の新種(Mayailurus iriomotensis)として発表されました。その後の DNA の研究から、現在はベンガルヤマネコの亜種とする考え方が主流です。環境省の資料では亜種 Prionailurus bengalensis iriomotensis とされていますが、2017年の IUCN ネコ専門家グループの分類報告では、ツシマヤマネコと同じ亜種 P. b. euptilurus に含められています。IUCN レッドリストでは P. b. iriomotensis の名で深刻な危機(CR)と評価されてきました。
豆知識
- 地元では「ヤマピカリャー」「ヤママヤー」と呼ばれてきました
- 西表島は2021年に世界自然遺産に登録され、イリオモテヤマネコはその価値を示す代表的な種とされています
- 耳の背面の白い斑は、ベンガルヤマネコの仲間に共通する特徴です
よくある質問
環境省の調査(2005〜2007年度)で、島に定住する個体は100〜109頭と推定されています。ここで示す数値は、この調査に基づくものです。
野生の個体を見る機会はめったにありません。西表島の西表野生生物保護センターでは、生きた個体ではなく剥製や資料を展示しています。島で車を運転するときは、ヤマネコの飛び出しに十分注意してください。
ペットとして捕獲・入手することはできません。国内希少野生動植物種として、捕獲や譲渡、販売などは種の保存法で原則禁止されており、保全や研究などの例外には許可が必要です。特別天然記念物でもあります。
西表野生生物保護センターの24時間ダイヤル(0980-85-5581)に連絡してください。