猫カフェ経済学!1匹あたりの収支から見る持続可能な経営

猫カフェ経済学!1匹あたりの収支から見る持続可能な経営

猫カフェ情報 投稿: 2025年09月23日   更新: 2025年10月12日

猫1匹が生み出す価値と費用

猫カフェは癒しのビジネス...でも、可愛い猫たちの裏側には、シビアな経済の現実があるんです。

「この子1匹を養うのに、いくらかかるんだろう?」「この子は、どれくらいお客さんを呼んでくれているんだろう?」猫カフェのオーナーさんは、きっと毎日そんなことを考えているはず。

生き物を扱う以上、愛情だけでは経営は成り立ちません。1匹の猫にかかる費用と、その猫が生み出す収益のバランス...今回は、猫カフェの経済学を、1匹あたりの視点から詳しく見ていきましょう。

1匹あたりのコスト構造

猫を迎えるための初期投資

猫との出会い方で費用は大きく変わる
猫カフェの主役である猫たちを迎えるには、様々な方法があります。

保護猫を迎える場合、猫自体への対価は発生しないことが多いですが、初期の医療費(ワクチン、去勢・避妊手術、健康診断など)は必要です。これは新しい家族の健康を守るための大切な投資。そして何より、行き場のない命に新しい居場所を提供できる、意義深い選択です。

ブリーダーさんから迎える場合、その道のプロが愛情を込めて育てた猫たちとの出会いになります。価格は様々ですが、それはブリーダーさんの努力と専門知識への対価でもあります。

ペットショップから迎える場合も選択肢の一つ。猫カフェに向いた性格の子を見極める目利きが大切になります。

さらに、猫を迎えたら必要になるのが初期医療費と用品一式。ベッド、爪とぎ、おもちゃ、食器...一つ一つは小さな出費でも、積み重なると結構な金額になります。

保護猫を迎えることは、命を救い、共に生きる仲間を得ること。経済的なメリットは副次的なもので、本質は新しい家族との出会いなんです。

毎月かかるランニングコスト

猫1匹を養うのに必要な月々の出費
猫カフェの猫たちにかかる月々の維持費を見てみましょう。

まず食費。質の良いフードを与えたいけど、コストも考えなければ...このジレンマは、多くのオーナーさんの悩みの種。1匹あたり月に数千円程度といわれていますが、健康を考えると削れない出費です。

トイレの砂も、毎日使うものだから意外とコストがかかります。においを抑える高品質な砂を使いたいけど、10匹いたら...と計算すると、結構な金額に。

そして忘れてはいけないのが医療費の積立。元気な時こそ、病気や怪我に備えて積み立てておく必要があります。「うちの子は健康だから大丈夫」と思っていても、突然の病気は誰にでも起こりうるんです。

ペット保険に加入している猫カフェも増えています。月々の保険料は負担ですが、高額医療費のリスクヘッジとしては有効な選択肢です。

見落としがちな人件費の配分

プロフェッショナルなケアの価値
実は、猫カフェの最大のコストは人件費ですが、これは当然のことです。

猫たちの健康管理、適切な食事の提供、清潔な環境の維持、お客様への対応...これらは全て専門知識と愛情を持ったスタッフだからこそできること。スタッフさんは単なる「お世話係」ではなく、猫たちの健康と幸せを守るプロフェッショナルなんです。

一般的に、10匹の猫に対してスタッフ1名が必要といわれています。社会保険や研修費用なども含めると、1匹あたりの人件費は想像以上に大きくなります。

でも、適正な給与を確保することは、スタッフさんが安心して猫たちに愛情を注げる環境を作ること。それが結果的に、猫たちの幸せにつながるんです。

収益モデル分析

猫との出会いがもたらす価値

お客様が支払うのは「幸せな時間」への対価
猫カフェの収益を「猫が稼ぐ」と表現するのは適切ではありません。

お客様が支払ってくださる料金は、猫たちとの貴重な出会い癒しの時間非日常の体験への対価。そして、その収益があるからこそ、猫たちに質の高い生活を提供できるんです。

例えば、平均客単価1,500円の猫カフェに、1日30〜50名のお客様が来店したとします。猫が10匹いる店舗なら、理論上は1匹あたりかなりの貢献になりますが、これはあくまで計算上の話

実際は、全ての猫が均等にお客様と触れ合うわけではありません。人気のある子とそうでない子、活発な子とおとなしい子...それぞれの個性があり、それが猫カフェの魅力でもあるんです。

オーナーさんは、猫たちが幸せに暮らせる環境を整え、お客様に素敵な体験を提供し、スタッフさんが働きやすい職場を作る...この全てのバランスを取るために、日々奮闘されています。

稼働率の厳しい現実

満席になることは稀
猫カフェの稼働率は、想像以上に変動が大きいんです。

平日の昼間はガラガラ、週末は満席...この差は、経営を大きく左右します。月平均で見ると、満席の半分程度の稼働率になることが多いといわれています。

さらに季節変動も無視できません。寒い冬は「猫カフェで温まろう」というお客様が増えますが、春や秋の行楽シーズンは客足が遠のきがち。安定した集客は、永遠の課題なんです。

猫の「資産価値」

看板猫という存在

個性が輝く場所
「スター猫」「看板猫」と呼ばれる子たちは、決して「稼ぎ頭」ではありません。

彼らはその子らしく生きているだけ。その自然な姿が、たまたま多くの人の心を掴んだんです。SNSで人気になったとしても、それはその子の個性が認められた証であって、「利用価値」ではありません。

むしろオーナーさんやスタッフさんは、人気のある子もそうでない子も、全ての猫を平等に大切にする努力をされています。それぞれの猫が、それぞれのペースで、お客様との関係を築いていく...それが猫カフェの本来の姿です。

インスタグラムのフォロワーが増えれば、確かに宣伝効果はあります。でもそれは、猫たちの魅力が自然に広がった結果。グッズ展開にしても、ファンの方々が「この子の思い出を形に残したい」という気持ちから生まれるものです。

年齢を重ねた猫たちへの敬意

シニア猫の尊厳ある暮らし
猫も人間と同じように、ライフステージがあります。

子猫期は、確かに可愛さMAXで、初めてのお客様も歓声を上げます。でもそれは、子猫本来の無邪気さが人を惹きつけるだけ。

成猫期になると、落ち着いた魅力が出てきます。性格も安定し、お客様との距離感も上手に取れるようになります。

中年期の猫は、常連さんに愛される存在に。「あの子、最近ちょっと太った?」なんて会話も、親近感と愛情の表れです。

そして高齢期。年を重ねた猫たちは、店の歴史を知る長老として、特別な存在感を持っています。若い頃とは違う穏やかな魅力があり、常連のお客様にとってはかけがえのない存在

医療費が増えるのは事実ですが、それは共に歩んできた仲間への恩返し。多くのオーナーさんは、「この子たちがいたから今の店がある」という感謝の気持ちで、最後まで大切にケアされています。

規模の経済学

最適な猫の頭数とは

多すぎても少なすぎてもダメ
猫カフェの適正規模って、どれくらいなのでしょうか?

5匹以下だと、選択肢が少なくて物足りない印象に。お客様も「もっといろんな猫と触れ合いたい」と感じるかもしれません。収支的にも、固定費を賄うのが難しくなります。

10〜15匹くらいが、多くの猫カフェで採用されている規模。これくらいだと、個性豊かな猫たちがいて、でも一匹一匹をきちんと管理できる。経済的にも最も効率的といわれています。

20匹を超えると、管理が急に大変になります。健康チェック、給餌、トイレ掃除...スタッフの負担も増え、猫たちへの目も行き届きにくくなります。

30匹以上になると、もはや専門の管理スタッフが必要なレベル。猫の幸せを考えると、適正規模を守ることが大切です。

多頭飼育のメリットとデメリット

スケールメリットは確かにある
猫の頭数が増えると、規模の経済が働きます。

フードや砂をまとめ買いすれば、単価は下がります。設備も共有できるし、スタッフの効率も上がります。何より、1匹が体調不良でも、他の猫たちがお客様を楽しませてくれる...リスク分散にもなります。

でも、管理の難しさは指数関数的に上昇。猫同士の相性問題、縄張り争い、感染症のリスク...頭数が増えれば増えるほど、予期せぬトラブルも増えていきます。

付加価値サービスで稼ぐ

本業以外の収益源

猫カフェは総合エンターテインメント
時間料金だけでは限界がある...そこで重要になるのが付加価値サービスです。

グッズ販売は定番中の定番。オリジナルTシャツ、マグカップ、トートバッグ...「推し猫」のグッズは、ファンにとっては宝物です。原価率を考えると、意外と利益率が高いんです。

写真撮影サービスも人気。プロのカメラマンを呼んで、猫との2ショットを撮影。記念日や誕生日に利用する方も多いです。

猫の誕生日イベントは、常連さんが大喜び。特別ケーキ(人間用)を用意したり、限定グッズを作ったり。コミュニティの絆も深まります。

最近ではオンライン配信で、投げ銭収入を得る猫カフェも。遠方のファンや、アレルギーで来店できない方にも、猫たちの魅力を届けられます。

保護猫カフェという選択

命を救い、つなぐ場所
保護猫カフェは、単なるビジネスモデルではありません。

行き場を失った猫たちに第二の猫生を提供し、新しい家族との出会いの場を作る...これは社会的使命です。里親が見つかった時の手数料は、決して「利益」ではなく、次の命を救うための資金

寄付金や助成金、企業スポンサーも、この崇高な使命に共感して集まります。「殺処分ゼロ」という目標に向けて、多くの人々が支援の手を差し伸べてくれるんです。

保護猫カフェのオーナーさんたちは、経営者であると同時に、命の架け橋としての重要な役割を担っています。その献身的な努力には、心から敬意を表したいと思います。

医療費という大きなリスク

予想外の出費に備える

1匹の病気が経営を揺るがす
猫カフェ経営で最も怖いのが、予想外の医療費です。

緊急手術が必要になったら、一度に数十万円が飛んでいきます。慢性疾患を抱えてしまったら、毎月の医療費が...。最悪のケースでは、感染症が蔓延して、全頭の治療が必要になることも。

でも、猫の健康は最優先事項。「お金がないから治療しない」なんて選択肢はありません。だからこそ、日頃からの備えが重要なんです。

リスクヘッジの方法

備えあれば憂いなし
医療費リスクをコントロールする方法はいくつかあります。

ペット保険は、月々の保険料は負担ですが、高額医療費の時には本当に助かります。複数頭で団体割引が適用される保険会社もあります。

医療費積立金を作っておくことも大切。売上の一定割合を、猫たちの貯金として積み立てる。いざという時の安心感が違います。

提携動物病院を見つけることも重要。定期的に通うことで信頼関係を築き、緊急時にも対応してもらいやすくなります。

そして何より、予防医療の徹底。定期健診、ワクチン接種、日々の健康チェック...これらが最大のリスクヘッジです。

地域による収支の違い

都市部と地方の経済学

立地によって全く違う収支構造
猫カフェの経済は、立地によって大きく変わります

都市部では、客単価を高く設定できる反面、家賃が重くのしかかります。渋谷や原宿の一等地なら、家賃だけで...考えたくない金額です。でも、集客は比較的容易で、観光客も期待できます。

地方では、家賃は抑えられますが、客単価も低くなりがち。集客も一苦労で、車でしか来られない立地だと、さらに厳しくなります。でも、競争が少ないので、地域に愛される店になれば、安定経営も可能です。

それぞれにメリット・デメリットがあり、「どちらが正解」というものはありません。大切なのは、その土地に合った経営スタイルを見つけることです。

オーナーさんの葛藤と努力

経済と愛情の狭間で

見えない苦労と工夫
猫カフェのオーナーさんは、日々難しい判断を迫られています。

「もっと良いフードを与えたいけど、経営が...」「スタッフさんの給料を上げたいけど...」「新しい猫を迎えたいけど、今いる子たちの負担は...」こうした葛藤の中で、最善のバランスを模索し続けています。

お客様からは見えないところで、資金繰りに悩み、猫の健康を心配し、スタッフのシフトを調整し...それでも笑顔で店に立つオーナーさんたち。そのプロフェッショナリズムには頭が下がります。

持続可能な経営のために

健全経営の指標

数字で見る経営の健康状態
猫カフェの経営が健全かどうか、いくつかの指標で判断できます。

猫1匹あたりの月間来客数、医療費が売上に占める割合、リピート率...これらの数字を定期的にチェックすることで、経営の健康状態が見えてきます。

でも、数字だけが全てではありません。猫たちの健康スコア、スタッフの満足度、お客様の笑顔の数...数値化できない要素も、同じくらい大切です。

投資回収という現実

長期的な視点が必要
猫カフェの初期投資を回収するには、時間がかかります

一般的に、黒字化まで1〜2年、初期投資の回収には2〜5年かかるといわれています。この間、赤字に耐える資金力と、何より情熱が必要です。

でも、軌道に乗れば、安定した収益も期待できます。常連さんが増え、口コミが広がり、メディアにも取り上げられる...そうなれば、経営も楽になってきます。

猫カフェの社会的価値

お金では測れない価値

地域社会への貢献
猫カフェの価値は、経済効果だけでは測れません

地域のコミュニティ形成、動物愛護の啓発、人々への癒しの提供...これらは数字には表れませんが、確実に社会に貢献しています。

一人暮らしの高齢者が、猫に会いに通う。不登校の子供が、猫となら心を開ける。仕事で疲れた人が、猫に癒される。こうした目に見えない価値こそ、猫カフェの本当の存在意義かもしれません。

まとめ

猫カフェの経済学は、単純な収支計算では語れない、命と愛情と責任が複雑に絡み合った世界でした。

猫たちは「働いている」のではなく、ありのままの姿で存在しているだけ。その姿に癒されたお客様が対価を支払い、その資金で猫たちの幸せな生活が保証される。オーナーさんとスタッフさんは、この幸せの循環を支える重要な役割を担っています。

経済的な持続可能性は確かに重要です。でもそれは、猫も人も幸せになるための手段であって、目的ではありません。

猫への愛情、お客様への感謝、スタッフへの敬意、そして経営者としての責任...これら全てのバランスを取りながら運営される猫カフェ。その努力と献身に、改めて深い敬意を表したいと思います。


この記事は、にゃんこDB事務局が作成しました。

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